し梟《ふくろふ》に意外なやうでしたから、急いでそのあとへつけたしました。
「とんびが染屋を出したかねえ。あいつはなるほど手が長くて染ものをつかんで壺《つぼ》に漬《つ》けるには持って来いだらう。」
「さうです。そしていったいとんびは大へん機敏なやつで勿論《もちろん》その染屋だって全くのそろばん勘定からはじめましたにちがひありません。いったい鳶《とんび》は手が長いので鳥を染壺《そめつぼ》に入れるには大へん都合がようございました。」
 あっ、私が染ものといったのは鳥のからだだった、あぶないことを云ったもんだ、よくそれで梟が怒り出さなかったと私はひやひやしました。ところが梟はずんずん話をつゞけました。それといふのもその晩は林の中に風がなくて淵《ふち》のやうにひそまり西のそらには古びた黄金《きん》の鎌《かま》がかかり楢《なら》の木や松の木やみなしんとして立ってゐてそれも睡《ねむ》ってゐないものはじっと話を聴いてるやう大へんに梟の機嫌《きげん》がよかったからです。
「いや、もう鳥どものよろこびやうと云ったらございません。殊にも雀《すずめ》ややまがらやみそさざい、めじろ、ほゝじろ、ひたき、うぐひすな
前へ 次へ
全13ページ中6ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
宮沢 賢治 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング