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「雪の降る日はひるまでも
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そらはいちめんまつくらで
わづかに雁の行くみちが
ぼんやり白く見えるのだ。
砂がこごえて飛んできて
枯れたよもぎをひつこぬく。
抜けたよもぎは次次と
都の方へ飛んで行く。」
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みんなは、みちの両側に、垣《かき》をきづいて、ぞろつとならび、泪《なみだ》を流してこれを見た。
かくて、バーユー将軍が、三町ばかり進んで行つて、町の広場についたとき、向ふのお宮の方角から、黄いろな旗がひらひらして、誰《たれ》かこつちへやつてくる。これはたしかに知らせが行つて、王から迎ひが来たのである。
ソン将軍は馬をとめ、ひたひに高く手をかざし、よくよくそれを見きはめて、それから俄《には》かに一礼し、急いで、馬を降りようとした。ところが馬を降りれない、もう将軍の両足は、しつかり馬の鞍《くら》につき、鞍はこんどは、がつしりと馬の背中にくつついて、もうどうしてもはなれない。さすが豪気の将軍も、すつかりあわてて赤くなり、口をびくびく横に曲げ、一生けん命、はね下りようとするのだが、どうにもからだがうごかなかつた。あゝこれ
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