の電燈《あかり》をそのまゝに、 ひさげのこりし桃の顆《み》の、
アムスデンジュンいろ紅き、 ほのかに映えて熟るるらし。
〔きみにならびて野にたてば〕
きみにならびて野にたてば、 風きららかに吹ききたり、
柏ばやしをとゞろかし、 枯葉を雪にまろばしぬ。
げにもひかりの群青や、 山のけむりのこなたにも、
鳥はその巣やつくろはん、 ちぎれの艸をついばみぬ。
初七日
落雁と黒き反り橋、 かの児こそ希ひしものを。
あゝくらき黄泉路《よみぢ》の巌に、 その小き掌《て》もて得なんや。
木綿《ゆふ》つけし白き骨箱、 哭き喚《よ》ぶもけはひあらじを。
日のひかり煙を青み、 秋風に児らは呼び交ふ。
〔林の中の柴小屋に〕
林の中の柴小屋に、 醸し成りたる濁り酒、 一筒汲みて帰り来し、
むかし誉れの神童は、 面青膨れて眼ひかり、 秋はかたむく山里を、
どてら着て立つ風の中。 西は縮れて雲傷み、 青き大野のあちこちに、
雨かとそゝぐ日のしめり、 こなたは古りし苗代の、 刈敷朽ちぬと水黝き、
なべて丘にも林にも、 たゞ鳴る松
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