霰にはかにそゝぎくる。



  〔こらはみな手を引き交へて〕

こらはみな手を引き交へて、  巨けく蒼きみなかみの、
つつどり声をあめふらす、   水なしの谷に出で行きぬ。

廐に遠く鐘鳴りて、      さびしく風のかげろへば、
小さきシャツはゆれつゝも、  こらのおらびはいまだ来ず。



  〔翔けりゆく冬のフエノール〕

翔けりゆく冬のフエノール、  ポプラとる黒雲の椀《わん》。

留学の序を憤り、       中庭にテニス拍つ人。



  退職技手

こぞりてひとを貶《おと》しつゝ、   わかれうたげもすさまじき、
おのれこよひは暴《あ》れんぞと、  青き瓶袴も惜しげなく、
籾緑金に生えそめし、     代にひたりて田螺ひろへり。



  〔月のほのほをかたむけて〕

月のほのほをかたむけて、   水杵はひとりありしかど、
搗けるはまこと喰《は》みも得ぬ、  渋きこならの実なりけり。

さらばとみちを横ぎりて、   束せし廐肥の幾十つら、
祈るがごとき月しろに、    朽ちしとぼそをうかゞひぬ。

まどろむ馬の胸にして、    おぼろに鈴は音をふるひ、
山の焼畑 石
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