なたにて、    人らほのかに祝ふらし。



  〔氷雨虹すれば〕

氷雨虹すれば、  時計盤たゞに明るく、
病《いたつき》の今朝やまされる、  青き套門を入るなし。

二限わがなさん、  公《きみ》 五時を補ひてんや、
火をあらぬひのきづくりは、  神祝《かむほぎ》にどよもすべけれ。



  砲兵観測隊

(ばかばかしきよかの邑は、  よべ屯せしクゾなるを)
ましろき指はうちふるひ、   銀のモナドはひしめきぬ。

(いな見よ東かれらこそ、   古き火薬を燃し了へぬ)
うかべる雲をあざけりて、   ひとびと丘を奔せくだりけり。



  〔盆地に白く霧よどみ〕

盆地に白く霧よどみ、  めぐれる山のうら青を、
稲田の水は冽くして、  花はいまだにをさまらぬ。

窓五つなる学校《まなびや》に、   さびしく学童《こ》らをわがまてば、
藻を装へる馬ひきて、  ひとびと木炭を積み出づる。



  〔たそがれ思量惑くして〕

たそがれ思量惑くして、  銀屏流沙とも見ゆるころ、
堂は別時の供養とて、  盤鉦木鼓しめやかなり。

頬青き僧ら清らなるテノールなし、  老いし請僧時々に、
バス
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