ろじろとまじはりて]

川しろじろとまじはりて、   うたかたしげきこのほとり、
病きつかれわが行けば、    そらのひかりぞ身を責むる。

宿世のくるみはんの毬、    干割れて青き泥岩に、
はかなきかなやわが影の、   卑しき鬼をうつすなり。

蒼茫として夏の風、      草のみどりをひるがへし、
ちらばる蘆のひら吹きて、   あやしき文字を織りなしぬ。

生きんに生きず死になんに、  得こそ死なれぬわが影を、
うら濁る水はてしなく、    さゝやきしげく洗ふなり。



  風桜

風にとぎるゝ雨脚や、     みだらにかける雲のにぶ。

まくろき枝もうねりつゝ、   さくらの花のすさまじき。

あたふた黄ばみ雨を縫ふ、   もずのかしらのまどけきを。

いよよにどよみなみだちて、  ひかり青らむ花の梢《うれ》。



  萎花

酒精のかをり硝銀の、       肌膚灼くにほひしかもあれ、
大展覧の花むらは、        夏夜あざらに息づきぬ。

そは牛飼ひの商ひの、       はた鉄うてるもろ人の、
さこそつちかひはぐくみし、    四百の花のラムプなり。

声さやかな
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