ず、  われらはしかく習ふのみ。)

(浮屠らも天を云ひ伝へ、  三十三を数ふなり、
上の無色にいたりては、  光、思想を食めるのみ。)

そらのひかりのきはみなく、  ひるのたびぢの遠ければ、
をとめは餓ゑてすべもなく、  胸なる珞《たま》をゆさぶりぬ。



  〔遠く琥珀のいろなして〕


遠く琥珀のいろなして、  春べと見えしこの原は、
枯草《くさ》をひたして雪げ水、  さゞめきしげく奔るなり。

峯には青き雪けむり、   裾は柏の赤ばやし、
雪げの水はきらめきて、  たゞひたすらにまろぶなり。



  心相


こころの師とはならんとも、  こころを師とはなさざれと、
いましめ古りしさながらに、  たよりなきこそこゝろなれ。

はじめは潜む蒼穹に、     あはれ鵞王の影供ぞと、
面さへ映えて仰ぎしを、    いまは酸えしておぞましき、
澱粉堆とあざわらひ、
いたゞきすべる雪雲を、    腐《くだ》せし馬鈴薯とさげすみぬ。



  肖像


朝のテニスを慨《なげか》ひて、   額は貢《たか》し 雪の風。

入りて原簿を閲すれば、  その手砒硫の香にけぶる。



  暁眠
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