マニトリテ来シ、  木ノ芽ノ数ヲトリカハシ、
アルイハ百合ノ五|塊《タマ》ヲ、    ナガ大母ニ持テトイフ。

ヤガテ高木モ夜トナレバ、   サラニアシタヲ云ヒカハシ、
ヒトビトオノモ松ノ野ヲ、   ワギ家ノカタヘイソギケリ。



  〔みちべの苔にまどろめば〕


みちべの苔にまどろめば、  日輪そらにさむくして、
わづかによどむ風くまの、  きみが頬ちかくあるごとし。

まがつびここに塚ありと、  おどろき離《か》るゝこの森や、
風はみそらに遠くして、   山なみ雪にたゞあえかなる。



  〔二山の瓜を運びて〕


二山の瓜を運びて、    舟いだす酒のみの祖父《ぢぢ》。

たなばたの色紙購ふと、  追ひすがる赤|髪《け》のうなゐ。

ま青なる天弧の下を、   きららかに町はめぐりつ。

ここにして集へる川の、  はてしなみ萌ゆるうたかた。



  〔けむりは時に丘丘の〕


けむりは時に丘丘の、  栗の赤葉に立ちまどひ、
あるとき黄なるやどり木は、  ひかりて窓をよぎりけり。

(あはれ土耳古玉《タキス》のそらのいろ、  かしこいづれの天なるや)
(かしこにあらずこゝなら
前へ 次へ
全34ページ中7ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
宮沢 賢治 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング