マニトリテ来シ、 木ノ芽ノ数ヲトリカハシ、
アルイハ百合ノ五|塊《タマ》ヲ、 ナガ大母ニ持テトイフ。
ヤガテ高木モ夜トナレバ、 サラニアシタヲ云ヒカハシ、
ヒトビトオノモ松ノ野ヲ、 ワギ家ノカタヘイソギケリ。
〔みちべの苔にまどろめば〕
みちべの苔にまどろめば、 日輪そらにさむくして、
わづかによどむ風くまの、 きみが頬ちかくあるごとし。
まがつびここに塚ありと、 おどろき離《か》るゝこの森や、
風はみそらに遠くして、 山なみ雪にたゞあえかなる。
〔二山の瓜を運びて〕
二山の瓜を運びて、 舟いだす酒のみの祖父《ぢぢ》。
たなばたの色紙購ふと、 追ひすがる赤|髪《け》のうなゐ。
ま青なる天弧の下を、 きららかに町はめぐりつ。
ここにして集へる川の、 はてしなみ萌ゆるうたかた。
〔けむりは時に丘丘の〕
けむりは時に丘丘の、 栗の赤葉に立ちまどひ、
あるとき黄なるやどり木は、 ひかりて窓をよぎりけり。
(あはれ土耳古玉《タキス》のそらのいろ、 かしこいづれの天なるや)
(かしこにあらずこゝなら
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