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陶標春をつめたくて、    水松《いちゐ》も青く冴えそめぬ。

水うら濁る島の苔、     萱屋に玻璃のあえかなる。

瓶をたもちてうなゐらの、  みたりためらひ入りくるや。

神農像に饌《け》ささぐと、    学士はつみぬ蕗の薹。



  〔沃度ノニホヒフルヒ来ス〕


沃度ノニホヒフルヒ来ス、   青貝山ノフモト谷、
荒レシ河原ニヒトモトノ、   辛夷ハナ咲キ立チニケリ。

モロビト山ニ入ラントテ、   朝明ヲココニ待チツドヒ、
或イハ鋸ノ目ヲツクリ、    アルハタバコヲノミニケリ。

青キ朝日ハコノトキニ、    ケブリヲノボリユラメケバ、
樹ハサウサウト燃エイデテ、  カナシキマデニヒカリタツ。

 カクテアシタハヒルトナリ、  水音イヨヨシゲクシテ、
 鳥トキドキニ群レタレド、   ヒトノケハヒハナカリケリ。

雲ハ経紙ノ紺ニ暮レ、     樹ハカグロナル山山ニ、
梢螺鈿ノサマナシテ、     コトトフコロトナリニケリ。

ツカレノ銀ヲクユラシテ、   モロ人谷ヲイデキタリ、
ココニ二タビ口《クチ》ソソギ、    セナナル荷ヲバトトノヘヌ。

ソハヒマビ
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