に行く。
風ふきて広場広場のたまり水、 いちめんゆれてさゞめきにけり。
こはいかに赤きずぼんに毛皮など、 春木ながしの人のいちれつ。
なめげに見高らかに云ひ木流しら、 鳶をかつぎて過ぎ行きにけり。
列すぎてまた風ふきてぬかり水、 白き西日にさゞめきたてり。
西根よりみめよき女きたりしと、 角の宿屋に眼がひかるなり。
かつきりと額を剃りしすがめの子、 しきりに立ちて栗をたべたり。
腐植土のぬかるみよりの照り返しに 二銭の鏡売るゝともなし。
中尊寺〔一〕
七重の舎利の小塔に、 蓋なすや緑の燐光。
大盗は銀のかたびら、 をろがむとまづ膝だてば、
赭のまなこたゞつぶらにて、 もろの肱映えかゞやけり。
手触れ得ず十字燐光、 大盗は礼して没《き》ゆる。
嘆願隊
やがて四時ともなりなんを、 当主いまだに放たれず、
外の面は冬のむらがらす、 山の片面のかゞやける。
二羽の烏の争ひて、 さつと落ち入る杉ばやし、
このとき大気飽和して、 霧は氷と結びけり。
〔一才のアルプ花崗岩《みかげ》を〕
一才のア
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