をなせるなり。
〔翁面 おもてとなして世経るなど〕
翁面、 おもてとなして世経るなど、 ひとをあざみしそのひまに、
やみほゝけたれつかれたれ、 われは三十ぢをなかばにて、
緊那羅面とはなりにけらしな。
氷上
月のたはむれ薫《く》ゆるころ、 氷は冴えてをちこちに、 さゞめきしげくなりにけり。
をさけび走る町のこら、 高張白くつらねたる、 明治女塾の舎生たち。
さてはにはかに現はれて、 ひたすらうしろすべりする、 黒き毛剃の庶務課長。
死火山の列雪青く、 よき貴人の死蝋とも、 星の蜘蛛来て網はけり。
〔うたがふをやめよ〕
うたがふをやめよ、 林は寒くして、
いささかの雪凍りしき、 根まがり杉ものびてゆるゝを。
胸張りて立てよ、 林の雪のうへ、
青き杉葉の落ちちりて、 空にはあまた烏なけるを。
そらふかく息せよ、 杉のうれたかみ、
烏いくむれあらそへば、 氷霧ぞさつとひかり落つるを。
電気工夫
(直き時計はさま頑《かた》く、 憎《ぞう》に鍛へし瞳《め》は強し)
さはあれ攀ぢる電塔の、 四方に
前へ
次へ
全34ページ中27ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
宮沢 賢治 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング