五輪塔 数をしらずも。
悍馬〔二〕
廐肥《こえ》をはらひてその馬の、 まなこは変る紅《べに》の竜、
けいけい碧きびいどろの、 天をあがきてとらんとす。
黝き菅藻の袍はねて、 叩きそだたく封介に、
雲ののろしはとゞろきて、 こぶしの花もけむるなり。
巨豚
巨豚ヨークシャ銅の日に、 金毛となりてかけ去れば、
棒をかざして髪ひかり、 追ふや里長のまなむすめ。
日本里長森を出で、 小手をかざして刻を見る、
鬚むしやむしやと物喰むや、 麻布も青くけぶるなり。
日本の国のみつぎとり、 里長を追ひて出で来り、
えりをひらきてはたはたと、 紙の扇をひらめかす。
巨豚ヨークシャ銅の日を、 こまのごとくにかたむきて、
旋れば降《くだ》つ栗の花、 消ゆる里長のまなむすめ。
眺望
雲環かくるかの峯は、 古生諸層をつらぬきて
侏羅紀に凝りし塩岩の、 蛇紋化せしと知られたり。
青き陽遠くなまめきて、 右に亙せる高原は、
花崗閃緑 削剥の、 時代は諸《もろ》に論《あげつら》ふ。
ま白き
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