、 旋り了りてまこと明るし。
公子
桐群に臘の花洽ち、 雲ははや夏を鋳そめぬ。
熱はてし身をあざらけく、 軟風のきみにかぐへる。
しかもあれ師はいましめて、 点竄の術得よといふ。
桐の花むらさきに燃え、 夏の雲遠くながるゝ。
〔銅鑼と看版 トロンボン〕
銅鑼と看版 トロンボン、 孤光燈《アークライト》の秋風に、
芸を了りてチャリネの子、 その影小くやすらひぬ。
得も入らざりし村の児ら、 叔父また父の肩にして、
乞ふわが栗を喰《た》うべよと、 泳ぐがごとく競ひ来る。
〔古き勾当貞斎が〕
古き勾当貞斎が、 いしぶみ低く垂れ覆ひ、
雪の楓は暮れぞらに、 ひかり妖しく狎れにけり。
連れて翔けこしむらすゞめ、 たまゆらりうと羽はりて、
沈むや宙をたちまちに、 りうと羽はり去りにけり。
涅槃堂
烏らの羽音重げに、 雪はなほ降りやまぬらし。
わがみぬち火はなほ然へて、 しんしんと堂は埋るゝ。
風鳴りて松のさざめき、 またしばし飛びかふ鳥や。
雪の山また雪の丘、
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