かはりけり。
みちをながるゝ雪代に、 銹びしナイフをとりいでつ、
しばし閲してまもりびと、 さびしく水をはねこゆる。
副業
雨降りしぶくひるすぎを、 青きさゝげの籠とりて、
巨利を獲るてふ副業の、 銀毛兎に餌すなり。
兎はつひにつぐのはね、 ひとは頬あかく美しければ、
べつ甲ゴムの長靴や、 緑のシャツも着くるなり。
紀念写真
学生壇を並び立ち、 教授助教授みな座して、
つめたき風の聖餐を、 かしこみ呼ぶと見えにけり。
(あな虹立てり降るべしや)
(さなりかしこはしぐるらし)
……あな虹立てり降るべしや……
……さなりかしこはしぐるらし……
写真師台を見まはして、 ひとりに面をあげしめぬ。
時しもあれやさんとして、 身を顫はする学の長《をさ》、
雪刷く山の目もあやに、 たゞさんとして身を顫ふ。
……それをののかんそのことの、 ゆゑはにはかに推し得ね、
大礼服にかくばかり、 美しき効果をなさんこと、
いづちの邦の文献か、 よく録しつるものあらん……
しかも手練《てなれ》の写真
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