師が、 三秒ひらく大レンズ、
千の瞳のおのおのに、 朝の虹こそ宿りけれ。
塔中秘事
雪ふかきまぐさのはたけ、 玉蜀黍《きみ》畑|漂雪《フキ》は奔りて、
丘裾の脱穀塔を、 ぼうぼうとひらめき被ふ。
歓喜天そらやよぎりし、 そが青き天《あめ》の窓より、
なにごとか女のわらひ、 栗鼠のごと軋りふるへる。
〔われのみみちにたゞしきと〕
われのみみちにたゞしきと、 ちちのいかりをあざわらひ、
ははのなげきをさげすみて、 さこそは得つるやまひゆゑ、
こゑはむなしく息あへぎ、 春は来れども日に三たび、
あせうちながしのたうてば、 すがたばかりは録されし、
下品ざんげのさまなせり。
朝
旱割れそめにし稲沼に、 いまころころと水鳴りて、
待宵草に置く露も、 睡たき風に萎むなり。
鬼げし風の襖子《あをし》着て、 児ら高らかに歌すれば、
遠き讒誣の傷あとも、 緑青いろにひかるなり。
〔猥れて嘲笑《あざ》めるはた寒き〕
猥れて嘲笑《あざ》めるはた寒き、 凶つのまみをはらはんと
かへさまた経るしろ
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