えしやみどりの縮葉甘藍《ケール》、 県視学はかなきものを。
早池峯山巓
石絨《アスベスト》脈なまぬるみ、 苔しろきさが巌にして、
いはかゞみひそかに熟し、 ブリューベル露はひかりぬ。
八重の雲遠くたゝへて、 西東はてをしらねば、
白堊紀の古きわだつみ、 なほこゝにありわぶごとし。
社会主事 佐伯正氏
群れてかゞやく辛夷花樹《マグノリア》、 雪しろたゝくねこやなぎ、
風は明るしこの郷《さと》の、 士《ひと》はそゞろに吝《やぶさ》けき。
まんさんとして漂へば、 水いろあはき日曜《どんたく》の、
馬を相する漢子《をのこ》らは、 こなたにまみを凝すなり。
市日
丹藤《タンド》に越ゆるみかげ尾根、 うつろひかればいと近し。
地蔵菩薩のすがたして、 栗を食《た》うぶる童《わらはべ》と、
縞の粗麻布《ジユート》の胸しぼり、 鏡欲りするその姉と。
丹藤に越ゆる尾根の上に、 なまこの雲ぞうかぶなり。
廃坑
春ちかけれど坑々の、 祠は荒れて天霧し、
事務所飯場もおしなべて、 鳥の宿りと
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