いで学校の裏の岩穴のところへ行きました。そしてみんなはいよいよあとを追って行きました。
 一郎がそれをのぞくと、思わず顔いろを変えました。
 それは魚の毒もみにつかう山椒《さんしょ》の粉で、それを使うと発破《はっぱ》と同じように巡査に押えられるのでした。ところが佐太郎はそれを岩穴の横の萱《かや》の中へかくして、知らない顔をして運動場へ帰りました。
 そこでみんなはひそひそと、時間になるまでいつまでもその話ばかりしていました。
 その日も十時ごろからやっぱりきのうのように暑くなりました。みんなはもう授業の済むのばかり待っていました。
 二時になって五時間目が終わると、もうみんな一目散に飛びだしました。佐太郎もまた笊をそっと袖でかくして、耕助だのみんなに囲まれて河原へ行きました。三郎は嘉助と行きました。みんなは町の祭りのときのガスのようなにおいの、むっとするねむの河原を急いで抜けて、いつものさいかち淵《ぶち》に着きました。すっかり夏のような立派な雲の峰が東でむくむく盛りあがり、さいかちの木は青く光って見えました。
 みんな急いで着物をぬいで淵の岸に立つと、佐太郎が一郎の顔を見ながら言いまし
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