た。
「ちゃんと一列にならべ。いいか、魚《さかな》浮いて来たら泳いで行ってとれ。とったくらい与《や》るぞ。いいか。」
小さなこどもらはよろこんで、顔を赤くして押しあったりしながらぞろっと淵《ふち》を囲みました。
ぺ吉《きち》だの三四人はもう泳いで、さいかちの木の下まで行って待っていました。
佐太郎が大威張りで、上流の瀬に行って笊《ざる》をじゃぶじゃぶ水で洗いました。
みんなしいんとして、水をみつめて立っていました。
三郎は水を見ないで向こうの雲の峰の上を通る黒い鳥を見ていました。一郎も河原にすわって石をこちこちたたいていました。
ところが、それからよほどたっても魚は浮いて来ませんでした。
佐太郎はたいへんまじめな顔で、きちんと立って水を見ていました。きのう発破《はっぱ》をかけたときなら、もう十匹もとっていたんだとみんなは思いました。またずいぶんしばらくみんなしいんとして待ちました。けれどもやっぱり魚は一ぴきも浮いて来ませんでした。
「さっぱり魚、浮かばないな。」耕助が叫びました。佐太郎はびくっとしましたけれども、まだ一心に水を見ていました。
「魚《さかな》さっぱり浮かばな
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