先生言うでないか。」
鼻のとがった人は少し困ったようにして、また言いました。
「川をあるいてわるいのか。」
「あんまり川をにごすなよ、
いつでも先生言うでないか。」
その人はあわてたのをごまかすように、わざとゆっくり川をわたって、それからアルプスの探検みたいな姿勢をとりながら、青い粘土と赤砂利《あかじゃり》の崖《がけ》をななめにのぼって、崖の上のたばこ畑へはいってしまいました。
すると三郎は、
「なんだい、ぼくを連れにきたんじゃないや。」と言いながらまっさきにどぶんと淵《ふち》へとび込みました。
みんなもなんだか、その男も三郎も気の毒なようなおかしながらんとした気持ちになりながら、一人ずつ木からはねおりて、河原に泳ぎついて、魚《さかな》を手ぬぐいにつつんだり、手にもったりして家に帰りました。
次の朝、授業の前みんなが運動場で鉄棒にぶらさがったり、棒かくしをしたりしていますと、少し遅れて佐太郎が何かを入れた笊《ざる》をそっとかかえてやって来ました。
「なんだ、なんだ。なんだ。」とすぐみんな走って行ってのぞき込みました。
すると佐太郎は袖《そで》でそれをかくすようにして、急
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