ゃい。」なんて言っているのでしたが、みんながどんどん歩きだしたので耕助もやっとついて来ました。
みんなは萱《かや》の間の小さなみちを山のほうへ少しのぼりますと、その南側に向いたくぼみに栗《くり》の木があちこち立って、下には葡萄がもくもくした大きな藪《やぶ》になっていました。
「こごおれ見っつけだのだがらみんなあんまりとるやないぞ。」耕助が言いました。
すると三郎は、
「おいら栗のほうをとるんだい。」といって石を拾って一つの枝へ投げました。青いいがが一つ落ちました。
三郎はそれを棒きれでむいて、まだ白い栗を二つとりました。みんなは葡萄《ぶどう》のほうへ一生けん命でした。
そのうち耕助がも一つの藪《やぶ》へ行こうと一本の栗《くり》の木の下を通りますと、いきなり上からしずくが一ぺんにざっと落ちてきましたので、耕助は肩からせなかから水へはいったようになりました。耕助はおどろいて口をあいて上を見ましたら、いつか木の上に三郎がのぼっていて、なんだか少しわらいながらじぶんも袖《そで》ぐちで顔をふいていたのです。
「わあい、又三郎何する。」耕助はうらめしそうに木を見あげました。
「風が吹いたん
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