をまっ赤《か》にして、しばらくそれを振り回して何か言おうと考えていましたが、
「おら知らないでとったんだい。」とおこったように言いました。
みんなはこわそうに、だれか見ていないかというように向こうの家を見ました。たばこばたけからもうもうとあがる湯げの向こうで、その家はしいんとしてだれもいたようではありませんでした。
「あの家一年生の小助《こすけ》の家だぢゃい。」嘉助が少しなだめるように言いました。ところが耕助ははじめからじぶんの見つけた葡萄藪《ぶどうやぶ》へ、三郎だのみんなあんまり来ておもしろくなかったもんですから、意地悪くもいちど三郎に言いました。
「わあ、三郎なんぼ知らないたってわがないんだぢゃ。わあい、三郎もどのとおりにしてまゆんだであ。」
三郎は困ったようにしてまたしばらくだまっていましたが、
「そんなら、おいらここへ置いてくからいいや。」と言いながらさっきの木の根もとへそっとその葉を置きました。すると一郎は、
「早くあべ。」と言って先にたってあるきだしましたのでみんなもついて行きましたが、耕助だけはまだ残って「ほう、おら知らないぞ。ありゃ、又三郎の置いた葉、あすごにあるぢ
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