命叫んでいます。三郎と嘉助は一生けん命馬を追いました。
ところが馬はもう今度こそほんとうに逃げるつもりらしかったのです。まるで丈《たけ》ぐらいある草をわけて高みになったり低くなったり、どこまでも走りました。
嘉助はもう足がしびれてしまって、どこをどう走っているのかわからなくなりました。
それからまわりがまっ蒼《さお》になって、ぐるぐる回り、とうとう深い草の中に倒れてしまいました。馬の赤いたてがみと、あとを追って行く三郎の白いシャッポが終わりにちらっと見えました。
嘉助は、仰向けになって空を見ました。空がまっ白に光って、ぐるぐる回り、そのこちらを薄いねずみ色の雲が、速く速く走っています。そしてカンカン鳴っています。
嘉助はやっと起き上がって、せかせか息しながら馬の行ったほうに歩き出しました。草の中には、今馬と三郎が通った跡らしく、かすかな道のようなものがありました。嘉助は笑いました。そして、(ふん、なあに馬どこかでこわくなってのっこり立ってるさ、)と思いました。
そこで嘉助は、一生懸命それをつけて行きました。
ところがその跡のようなものは、まだ百歩も行かないうちに、おとこえ
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