ではいって来たどての切れた所へ来たのです。
「あ、馬出はる、馬出はる。押えろ 押えろ。」一郎はまっ青《さお》になって叫びました。じっさい馬はどての外へ出たのらしいのでした。どんどん走って、もうさっきの丸太の棒を越えそうになりました。
一郎はまるであわてて、
「どう、どう、どうどう。」と言いながら一生けん命走って行って、やっとそこへ着いてまるでころぶようにしながら手をひろげたときは、そのときはもう二匹は柵《さく》の外へ出ていたのです。
「早ぐ来て押えろ。早ぐ来て。」一郎は息も切れるように叫びながら丸太棒をもとのようにしました。
四人は走って行って急いで丸太をくぐって外へ出ますと、二匹の馬はもう走るでもなく、どての外に立って草を口で引っぱって抜くようにしています。
「そろそろど押えろよ。そろそろど。」と言いながら一郎は一ぴきのくつわについた札のところをしっかり押えました。嘉助と三郎がもう一匹を押えようとそばへ寄りますと、馬はまるでおどろいたようにどてへ沿って一目散に南のほうへ走ってしまいました。
「兄《あい》な、馬あ逃げる、馬あ逃げる。兄《あい》な、馬逃げる。」とうしろで一郎が一生けん
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