りませんでした。
 そのうち先生は教壇へ戻って二年生と四年生の算術の計算をして見せてまた新しい問題を出すと、今度は五年生の生徒の雑記帳へ書いた知らない字を黒板へ書いて、それにかなとわけをつけました。そして、
「では嘉助さん、ここを読んで。」と言いました。
 嘉助は二三度ひっかかりながら先生に教えられて読みました。
 三郎もだまって聞いていました。
 先生も本をとって、じっと聞いていましたが、十行ばかり読むと、
「そこまで。」と言ってこんどは先生が読みました。
 そうして一まわり済むと、先生はだんだんみんなの道具をしまわせました。
 それから「ではここまで。」と言って教壇に立ちますと一郎がうしろで、
「気をつけい。」と言いました。そして礼がすむと、みんな順に外へ出てこんどは外へならばずにみんな別れ別れになって遊びました。
 二時間目は一年生から六年生までみんな唱歌でした。そして先生がマンドリンを持って出て来て、みんなはいままでに習ったのを先生のマンドリンについて五つもうたいました。
 三郎もみんな知っていて、みんなどんどん歌いました。そしてこの時間はたいへん早くたってしまいました。
 三
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