のひとはお休みの前にならった引き算をもう一ぺん習ってみましょう。これを勘定してごらんなさい。」先生は黒板に25−12=と書きました。二年生のこどもらはみんな一生けん命にそれを雑記帳にうつしました。かよも頭を雑記帳へくっつけるようにしています。「四年生の人はこれを置いて。」17×4=と書きました。
四年生は佐太郎をはじめ喜蔵も甲助《こうすけ》もみんなそれをうつしました。
「五年生の人は読本《とくほん》の(二字空白)ページの(二字空白)課をひらいて声をたてないで読めるだけ読んでごらんなさい。わからない字は雑記帳へ拾っておくのです。」五年生もみんな言われたとおりしはじめました。
「一郎さんは読本の(二字空白)ページをしらべてやはり知らない字を書き抜いてください。」
それがすむと先生はまた教壇をおりて、一年生の習字を一人一人見てあるきました。
三郎は両手で本をちゃんと机の上へもって、言われたところを息もつかずじっと読んでいました。けれども雑記帳へは字を一つも書き抜いていませんでした。それはほんとうに知らない字が一つもないのか、たった一本の鉛筆を佐太郎にやってしまったためか、どっちともわか
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