金取らへる。見《め》っけらへなぃば、すっこすっこど葡《ぶ》ん[#「ん」は小書き]萄酒《どしゅ》呑《の》む。」
「なじょして蔵《かぐ》して置ぐあん[#「ん」は小書き]す。」
「うん。砂糖入れで、すぐに今夜《こんにゃ》、瓶《びん》さ詰めでしむべぢゃ。そして落しの中さ置ぐべすさ。瓶、去年なのな、あったたぢゃな。」
「瓶はあらんす。」
「そだら砂糖持ってこ。喜助ぁ先《せん》どな持って来たけぁぢゃ。」
「あん、あらんす。」
砂糖が来ました。耕平はそれを鉢の汁の中に投げ込んで掻《か》きまはし、その汁を今度は布の袋にあけました。袋はぴんとはり切ってまっ赤なので、
「ほう、こいづはまるで牛《べご》の胆《きも》のよだな。」と耕平が云ひました。そのうちにおかみさんは流しでこちこち瓶を洗って持って来ました。
それから二人はせっせと汁を瓶につめて栓《せん》をしました。麦酒瓶《ビールびん》二十本ばかり出来あがりました。「特製御葡萄水」といふ、去年のはり紙のあるのもあります。このはり紙はこの辺で共同でこしらへたのです。
これをはって売るのです。さやう、去年はみんなで四十本ばかりこしらへました。もちろん砂糖は
前へ
次へ
全10ページ中6ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
宮沢 賢治 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング