うちには黄いろのラムプがぼんやりついて、馬屋では馬もふんふん云ってゐます。
耕平は、さっき頬《ほ》っぺたの光るくらゐご飯を沢山喰べましたので、まったく嬉《うれ》しがって赤くなって、ふうふう息をつきながら、大きな木鉢《きばち》へ葡萄のつぶをパチャパチャむしってゐます。
耕平のおかみさんは、ポツンポツンとむしってゐます。
耕平の子は、葡萄の房を振りまはしたり、パチャンと投げたりするだけです。何べん叱《しか》られてもまたやります。
「おゝ、青《あゑ》い青《あゑ》い、見《め》る見《め》る。」なんて云ってゐます。その黒光りの房の中に、ほんの一つか二つ、小さな青いつぶがまじってゐるのです。
それが半分すきとほり、青くて堅くて、藍晶石《らんしゃうせき》より奇麗です。あっと、これは失礼、青ぶだうさん、ごめんなさい。コンネテクカット大学校を、最優等で卒業しながら、まだこんなこと私は云ってゐるのですよ。みなさん、私がいけなかったのです。宝石は宝石です。青い葡萄は青い葡萄です。それをくらべたりなんかして全く私がいけないのです。実際コンネテクカット大学校で、私の習ってきたことは、「お前はきょろきょろ、
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