えるだけです。二人は困《こま》ってしまって腕《うで》を組んで立ちました。
すると小さなきれいな声で、誰《だれ》か歌いだしたものがあります。
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「ポッシャリ、ポッシャリ、ツイツイ、トン。
はやしのなかにふる霧《きり》は、
蟻《あり》のお手玉、三角帽子《さんかくぼうし》の、一寸法師《いっすんぼうし》のちいさなけまり」
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霧《きり》がトントンはね踊《おど》りました。
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「ポッシャリ、ポッシャリ、ツイツイ、トン。
はやしのなかにふる霧《きり》は、
くぬぎのくろい実《み》、柏《かしわ》の、かたい実《み》のつめたいおちち」
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霧《きり》がポシャポシャ降《ふ》ってきました。そしてしばらくしんとしました。
「誰《だれ》だろう。ね。誰《だれ》だろう。あんなことうたってるのは。二、三人のようだよ」
二人《ふたり》はまわりをきょろきょろ見ましたが、どこにも誰《だれ》もいませんでした。
声はだんだん高くなりました。それはじょうずな芝笛《しばぶえ》のように聞こえるのでした。
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