げ]
「ポッシャリ、ポッシャリ、ツイ、ツイ、ツイ。
はやしのなかにふるきりの、
つぶはだんだん大きくなり、
いまはしずくがポタリ」
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霧《きり》がツイツイツイツイ降《ふ》ってきて、あちこちの木からポタリッポタリッと雫《しずく》の音がきこえてきました。
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「ポッシャン、ポッシャン、ツイ、ツイ、ツイ。
はやしのなかにふるきりは、
いまにこあめにかぁわるぞ、
木はぁみんな 青外套《あおがいとう》。
ポッシャン、ポッシャン、ポッシャン、シャン」
[#ここで字下げ終わり]
きりはこあめにかわり、ポッシャンポッシャン降《ふ》ってきました。大臣《だいじん》の子は途方《とほう》に暮《く》れたように目をまんまるにしていました。
「誰《だれ》だろう。今のは。雨を降《ふ》らせたんだね」
大臣《だいじん》の子はぼんやり答えました。
「ええ、王子さま。あなたのきものは草の実《み》でいっぱいですよ」そして王子の黒いびろうどの上着《うわぎ》から、緑色《みどりいろ》のぬすびとはぎの実《み》を一ひらずつとりました。
王子がにわかに叫《さけ》びまし
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