り立派《りっぱ》に変わっていました。青いそらからかすかなかすかな楽《がく》のひびき、光の波《なみ》、かんばしく清《きよ》いかおり、すきとおった風のほめことばが丘《おか》いちめんにふりそそぎました。
なぜならばすずらんの葉《は》は今はほんとうの柔《やわ》らかなうすびかりする緑色《みどりいろ》の草だったのです。
うめばちそうはすなおな、ほんとうのはなびらをもっていたのです。そして十力《じゅうりき》の金剛石《こんごうせき》は野ばらの赤い実《み》の中のいみじい細胞《さいぼう》の一つ一つにみちわたりました。
その十力《じゅうりき》の金剛石《こんごうせき》こそは露《つゆ》でした。
ああ、そしてそして十力《じゅうりき》の金剛石《こんごうせき》は露《つゆ》ばかりではありませんでした。碧《あお》いそら、かがやく太陽《たいよう》、丘《おか》をかけて行く風、花のそのかんばしいはなびらや、しべ、草のしなやかなからだ、すべてこれをのせになう丘《おか》や野原、王子たちのびろうどの上着《うわぎ》や涙《なみだ》にかがやく瞳《ひとみ》、すべてすべて十力《じゅうりき》の金剛石《こんごうせき》でした。あの十力《じゅ
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