もします」
 まひるの笑《わら》いの虹《にじ》をあげてうめばちそうが言《い》いました。
「それはたちまち百千のつぶにもわかれ、また集《あつ》まって一つにもなります」
 はちすずめのめぐりはあまり速《はや》くてただルルルルルルと鳴るぼんやりした青い光の輪《わ》にしか見えませんでした。
 野《の》ばらがあまり気が立ち過《す》ぎてカチカチしながら叫《さけ》びました。
「十力《じゅうりき》の大宝珠《だいほうじゅ》はある時黒い厩肥《きゅうひ》のしめりの中に埋《う》もれます。それから木や草のからだの中で月光いろにふるい、青白いかすかな脈《みゃく》をうちます。それから人の子供《こども》の苹果《りんご》の頬《ほお》をかがやかします」
 そしてみんながいっしょに叫《さけ》びました。

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「十力《じゅうりき》の金剛石《こんごうせき》は今日も来ない。
 その十力《じゅうりき》の金剛石《こんごうせき》はまだ降《ふ》らない。
 おお、あめつちを充《み》てる十力《じゅうりき》のめぐみ
 われらに下れ」
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 にわかにはちすずめがキイーンとせなかの鋼鉄《こうてつ》の骨《
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