さ》して来る黄金色《きんいろ》の光をまぶしそうに手でさえぎりながら、
「十力《じゅうりき》の金剛石《こんごうせき》ってどんなものだ」とたずねました。
 野《の》ばらがよろこんでからだをゆすりました。
「十力《じゅうりき》の金剛石《こんごうせき》はただの金剛石《こんごうせき》のようにチカチカうるさく光りはしません」
 碧玉《へきぎょく》のすずらんが百の月が集《あつ》まった晩《ばん》のように光りながら向《む》こうから言《い》いました。
「十力《じゅうりき》の金剛石《こんごうせき》はきらめくときもあります。かすかににごることもあります。ほのかにうすびかりする日もあります。あるときは洞穴《どうけつ》のようにまっくらです」
 ひかりしずかな天河石《アマゾンストン》のりんどうも、もうとても踊《おど》りださずにいられないというようにサァン、ツァン、サァン、ツァン、からだをうごかして調子《ちょうし》をとりながら言《い》いました。
「その十力《じゅうりき》の金剛石《こんごうせき》は春の風よりやわらかく、ある時はまるくあるときは卵《たまご》がたです。霧《きり》より小さなつぶにもなれば、そらとつちとをうずめ
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