ろ」
[#ここで字下げ終わり]

 まっ碧《さお》な空では、はちすずめがツァリル、ツァリル、ツァリルリン、ツァリル、ツァリル、ツァリルリンと鳴いて二人とりんどうの花との上をとびめぐっておりました。
「ほんとうにりんどうの花は何がかなしいんだろうね」王子はトパァスを包《つつ》もうとして、一ぺんひろげたはんけちで顔の汗《あせ》をふきながら言《い》いました。
「さあ私にはわかりません」
「わからないねい。こんなにきれいなんだもの。ね、ごらん、こっちのうめばちそうなどはまるで虹《にじ》のようだよ。むくむく虹《にじ》が湧《わ》いてるようだよ。ああそうだ、ダイアモンドの露《つゆ》が一つぶはいってるんだよ」
 ほんとうにそのうめばちそうは、ぷりりぷりりふるえていましたので、その花の中の一つぶのダイアモンドは、まるで叫《さけ》び出すくらいに橙《だいだい》や緑《みどり》に美《うつく》しくかがやき、うめばちそうの花びらにチカチカ映《うつ》って言《い》いようもなく立派《りっぱ》でした。
 その時ちょうど風が来ましたので、うめばちそうはからだを少し曲《ま》げてパラリとダイアモンドの露《つゆ》をこぼしました。露
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