ました。
「ね、このりんどうの花はお父さんの所《ところ》の一等《いっとう》のコップよりも美《うつく》しいんだね。トパァスがいっぱいに盛《も》ってあるよ」
「ええ立派《りっぱ》です」
「うん。僕《ぼく》、このトパァスをはんけちへいっぱい持《も》ってこうか。けれど、トパァスよりはダイアモンドの方がいいかなあ」
王子ははんけちを出してひろげましたが、あまりいちめんきらきらしているので、もうなんだか拾《ひろ》うのがばかげているような気がしました。
その時、風が来て、りんどうの花はツァリンとからだを曲《ま》げて、その天河石《アマゾンストン》の花の盃《さかずき》を下の方に向《む》けましたので、トパァスはツァラツァランとこぼれて下のすずらんの葉《は》に落《お》ち、それからきらきらころがって草の底《そこ》の方へもぐって行きました。
りんどうの花はそれからギギンと鳴って起《お》きあがり、ほっとため息《いき》をして歌いました。
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「トパァスのつゆはツァランツァリルリン、
こぼれてきらめく サング、サンガリン、
ひかりの丘《おおか》に すみながら
なぁにがこんなにかなしか
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