《つゆ》はちくちくっとおしまいの青光をあげ碧玉《へきぎょく》の葉《は》の底《そこ》に沈《しず》んで行きました。
うめばちそうはブリリンと起《お》きあがってもう一ぺんサッサッと光りました。金剛石《こんごうせき》の強い光の粉《こな》がまだはなびらに残《のこ》ってでもいたのでしょうか。そして空のはちすずめのめぐりも叫《さけ》びも、にわかにはげしくはげしくなりました。うめばちそうはまるで花びらも萼《がく》もはねとばすばかり高く鋭《するど》く叫《さけ》びました。
[#ここから1字下げ]
「きらめきのゆきき
ひかりのめぐみ
にじはゆらぎ
陽《ひ》は織《お》れど
かなし。
青ぞらはふるい
ひかりはくだけ
風のきしり
陽《ひ》は織《お》れど
かなし」
[#ここで字下げ終わり]
野ばらの木が赤い実《み》から水晶《すいしょう》の雫《しずく》をポトポトこぼしながらしずかに歌いました。
[#ここから1字下げ]
「にじはなみだち
きらめきは織《お》る
ひかりのおかの
このさびしさ。
こおりのそこの
めくらのさかな
ひかりのおかの
このさびしさ。
たそがれぐもの
前へ
次へ
全23ページ中16ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
宮沢 賢治 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング