《つゆ》はちくちくっとおしまいの青光をあげ碧玉《へきぎょく》の葉《は》の底《そこ》に沈《しず》んで行きました。
 うめばちそうはブリリンと起《お》きあがってもう一ぺんサッサッと光りました。金剛石《こんごうせき》の強い光の粉《こな》がまだはなびらに残《のこ》ってでもいたのでしょうか。そして空のはちすずめのめぐりも叫《さけ》びも、にわかにはげしくはげしくなりました。うめばちそうはまるで花びらも萼《がく》もはねとばすばかり高く鋭《するど》く叫《さけ》びました。

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「きらめきのゆきき
 ひかりのめぐみ
 にじはゆらぎ
 陽《ひ》は織《お》れど
 かなし。

 青ぞらはふるい
 ひかりはくだけ
 風のきしり
 陽《ひ》は織《お》れど
 かなし」
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 野ばらの木が赤い実《み》から水晶《すいしょう》の雫《しずく》をポトポトこぼしながらしずかに歌いました。

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「にじはなみだち
 きらめきは織《お》る
 ひかりのおかの
 このさびしさ。

 こおりのそこの
 めくらのさかな
 ひかりのおかの
 このさびしさ。

 たそがれぐもの

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