まぶしいものだったでしょう。
 雨の向《む》こうにはお日さまが、うすい緑色《みどりいろ》のくまを取《と》って、まっ白に光っていましたが、そのこちらで宝石《ほうせき》の雨はあらゆる小さな虹《にじ》をあげました。金剛石《こんごうせき》がはげしくぶっつかり合っては青い燐光《りんこう》を起《おこ》しました。
 その宝石《ほうせき》の雨は、草に落《お》ちてカチンカチンと鳴りました。それは鳴るはずだったのです。りんどうの花は刻《きざ》まれた天河石《アマゾンストン》と、打《う》ち劈《くだ》かれた天河石《アマゾンストン》で組み上がり、その葉《は》はなめらかな硅孔雀石《クリソコラ》でできていました。黄色な草穂《くさぼ》はかがやく猫睛石《キャッツアイ》、いちめんのうめばちそうの花びらはかすかな虹《にじ》を含《ふく》む乳色《ちちいろ》の蛋白石《たんぱくせき》、とうやくの葉《は》は碧玉《へきぎょく》、そのつぼみは紫水晶《アメシスト》の美しいさきを持《も》っていました。そしてそれらの中でいちばん立派《りっぱ》なのは小さな野《の》ばらの木でした。野《の》ばらの枝《えだ》は茶色の琥珀《こはく》や紫《むらさき》がかっ
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