と同時に、林の中は俄《にわ》かにばさばさ羽の音がしたり、嘴《くちばし》のカチカチ鳴る音、低くごろごろつぶやく音などで、一杯《いっぱい》になりました。天《あま》の川《がわ》が大分まわり大熊星《おおぐまぼし》がチカチカまたたき、それから東の山脈の上の空はぼおっと古めかしい黄金《きん》いろに明るくなりました。
 前の汽車と停車場で交換《こうかん》したのでしょうか、こんどは南の方へごとごと走る音がしました。何だか車のひびきが大へん遅《おそ》く貨物列車らしかったのです。
 そのとき、黒い東の山脈の上に何かちらっと黄いろな尖《とが》った変なかたちのものがあらわれました。梟《ふくろう》どもは俄にざわっとしました。二十四日の黄金《きん》の角《つの》、鎌《かま》の形の月だったのです。忽《たちま》ちすうっと昇《のぼ》ってしまいました。沼《ぬま》の底の光のような朧《おぼろ》な青いあかりがぼおっと林の高い梢《こずえ》にそそぎ一疋の大きな梟が翅《はね》をひるがえしているのもひらひら銀いろに見えました。さっきの説教の松の木のまわりになった六本にはどれにも四疋から八疋ぐらいまで梟がとまっていました。低く出た三本のな
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