らんだ枝に三疋の子供の梟がとまっていました。きっと兄弟だったでしょうがどれも銀いろで大さは[#「大さは」はママ]みな同じでした。その中でこちらの二疋は大分|厭《あ》きているようでした。片っ方の翅をひらいたり、片脚《かたあし》でぶるぶる立ったり、枝へ爪《つめ》を引っかけてくるっと逆さになって小笠原《おがさわら》島のこうもりのまねをしたりしていました。
それから何か云《い》っていました。
「そら、大の字やって見せようか。大の字なんか何でもないよ。」
「大の字なんか、僕《ぼく》だってできらあ。」
「できるかい。できるならやってごらん。」
「そら。」その小さな子供の梟はほんの一寸《ちょっと》の間、消防のやるような逆さ大の字をやりました。
「何だい。そればっかしかい。そればっかしかい。」
「だって、やったんならいいんだろう。」
「大の字にならなかったい。ただの十の字だったい、脚が開かないじゃないか。」
「おい、おとなしくしろ。みんなに笑われるぞ。」すぐ上の枝に居たお父さんのふくろうがその大きなぎらぎら青びかりする眼でこっちを見ながら云いました。眼のまわりの赤い隈《くま》もはっきり見えました。
前へ
次へ
全44ページ中11ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
宮沢 賢治 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング