二十六夜
宮沢賢治
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)旧暦《きゅうれき》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)我今|汝《なんじ》に
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「口+敢」、第3水準1−15−19]
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旧暦《きゅうれき》の六月二十四日の晩でした。
北上《きたかみ》川の水は黒の寒天よりももっとなめらかにすべり獅子鼻《ししはな》は微《かす》かな星のあかりの底にまっくろに突《つ》き出ていました。
獅子鼻の上の松林《まつばやし》は、もちろんもちろん、まっ黒でしたがそれでも林の中に入って行きますと、その脚《あし》の長い松の木の高い梢《こずえ》が、一本一本空の天《あま》の川《がわ》や、星座にすかし出されて見えていました。
松かさだか鳥だかわからない黒いものがたくさんその梢にとまっているようでした。
そして林の底の萱《かや》の葉は夏の夜の雫《しずく》をもうポトポト落して居《お》りました。
その松林のず
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