ところがなかなか小さな梟の兄弟は云うことをききませんでした。
「十の字、ほう、たての棒の二つある十の字があるだろうか。」
「二つに開かなかったい。」
「開いたよ。」
「何だ生意気な。」もう一疋は枝からとび立ちました。もう一疋もとび立ちました。二疋はばたばた、けり合ってはねが月の光に銀色にひるがえりながら下へ落ちました。
おっかさんのふくろうらしいさっきのお父さんのとならんでいた茶いろの少し小型のがすうっと下へおりて行きました。それから下の方で泣声が起りました。けれども間もなくおっかさんの梟はもとの処《ところ》へとびあがり小さな二疋ものぼって来て二疋とももとのところへとまって片脚で眼をこすりました。お母さんの梟がも一度|叱《しか》りました。その眼も青くぎらぎらしました。
「ほんとうにお前たちったら仕方ないねえ。みなさんの見ていらっしゃる処でもうすぐきっと喧嘩《けんか》するんだもの。なぜ穂吉《ほきち》ちゃんのように、じっとおとなしくしていないんだろうねえ。」
穂吉と呼ばれた梟は、三疋の中では一番小さいようでしたが一番|温和《おとな》しいようでした。じっとまっすぐを向いて、枝にとまった
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