洗うのじゃ。こなたの胸が霽《は》れるときは、かなたの心は燃えるのじゃ。いつかはまたもっと手ひどく仇を受けるじゃ、この身終って次の生《しょう》まで、その妄執《もうしゅう》は絶えぬのじゃ。遂《つい》には共に修羅《しゅら》に入り闘諍《とうそう》しばらくもひまはないじゃ。必らずともにさようのたくみはならぬぞや。」
 けたたましくふくろうのお母さんが叫《さけ》びました。
「穂吉穂吉しっかりおし。」
 みんなびくっとしました。穂吉のお父さんもあわてて穂吉の居た枝に飛んで行きましたがとまる所がありませんでしたからすぐその上の枝にとまりました。穂吉のおじいさんも行きました。みんなもまわりに集りました。穂吉はどうしたのか折られた脚をぷるぷる云わせその眼は白く閉じたのです。お父さんの梟は高く叫びました。
「穂吉、しっかりするんだよ。今お説教がはじまるから。」
 穂吉はパチッと眼をひらきました。それから少し起きあがりました。見えない眼でむりに向うを見ようとしているようでした。
「まあよかったね。やっぱりつかれているんだろう。」女の梟たちは云い合いました。
 坊さんの梟はそこで云いました。
「さあ、講釈をはじ
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