死んだ方がいい。それでもお父さんやお母さんは泣くだろう。泣くたって一体お父さんたちは、まだ僕の近くに居るだろうか、ああ痛い痛い。穂吉は声もなく泣きました。
「あんまりひどいやつらだ。こっちは何一つ向うの為《ため》に悪いようなことをしないんだ。それをこんなことをして、よこす。もうだまってはいられない。何かし返ししてやろう。」一|疋《ぴき》の若い梟《ふくろう》が高く云いました。すぐ隣《となり》りのが答えました。
「火をつけようじゃないか。今度|屑焼《くずや》きのある晩に燃えてる長い藁《わら》を、一本あの屋根までくわえて来よう。なあに十本も二十本も運んでいるうちにはどれかすぐ燃えつくよ。けれども火事で焼けるのはあんまり楽だ。何かも少しひどいことがないだろうか。」
又その隣りが答えました。
「戸のあいてる時をねらって赤子の頭を突《つ》いてやれ。畜生《ちくしょう》め。」
梟の坊《ぼう》さんは、じっとみんなの云うのを聴《き》いていましたがこの時しずかに云いました。
「いやいや、みなの衆、それはいかぬじゃ。これほど手ひどい事なれば、必らず仇《あだ》を返したいはもちろんの事ながら、それでは血で血を
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