にうごきました。
そして東の山のはから、昨日《きのう》の金角、二十五日のお月さまが、昨日よりは又ずうっと瘠《や》せて上りました。林の中はうすいうすい霧《きり》のようなものでいっぱいになり、西の方からあの梟のお父さんがしょんぼり飛んで帰って来ました。
*
旧暦《きゅうれき》六月二十六日の晩でした。
そらがあんまりよく霽《は》れてもう天《あま》の川《がわ》の水は、すっかりすきとおって冷たく、底のすなごも数えられるよう、またじっと眼をつぶっていると、その流れの音さえも聞えるような気がしました。けれどもそれは或《あるい》は空の高い処を吹いていた風の音だったかも知れません。なぜなら、星がかげろうの向う側にでもあるように、少しゆれたり明るくなったり暗くなったりしていましたから。
獅子鼻《ししはな》の上の松林《まつばやし》には今夜も梟の群が集まりました。今夜は穂吉が来ていました。来てはいましたが一昨日《おととい》の晩の処にでなしに、おじいさんのとまる処よりももっと高いところで小さな枝の二本行きちがい、それからもっと小さな枝が四五本出て、一寸《ちょっと》盃《さかずき》のような
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