形になった処へ、どこから持って来たか藁屑《わらくず》や髪《かみ》の毛などを敷《し》いて臨時に巣《す》がつくられていました。その中に穂吉が半分横になって、じっと目をつぶっていました。梟のお母さんと二人の兄弟とが穂吉のまわりに座《すわ》って、穂吉のからだを支えるようにしていました。林中のふくろうは、今夜は一人も泣いてはいませんでしたが怒《おこ》っていることはみんな、昨夜《ゆうべ》どころではありませんでした。
「傷《いた》みはどうじゃ。いくらか薄《うす》らいだかの。」
 あの坊さんの梟がいつもの高い処からやさしく訊《たず》ねました。穂吉は何か云《い》おうとしたようでしたが、ただ眼がパチパチしたばかり、お母さんが代って答えました。
「折角《せっかく》こらえているようでございます。よく物が申せないのでございます。それでもどうしても、今夜のお説教を聴聞《ちょうもん》いたしたいというようでございましたので。もうどうかかまわずご講義をねがいとう存じます。」
 梟の坊さんは空を見上げました。
「殊勝《しゅしょう》なお心掛《こころが》けじゃ。それなればこそ、たとえ脚《あし》をば折られても、二度と父母の処へ
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