《および》諸の強鳥を恐《おそ》る。心|暫《しばら》くも安らかなるなし、一度《ひとたび》梟身《きょうしん》を尽《つく》して、又|新《あらた》に梟身を得《う》、審《つまびらか》に諸の苦患《くげん》を被《こうむ》りて、又|尽ることなし。」
俄かに声が絶え、林の中はしぃんとなりました。ただかすかなかすかなすすり泣きの声が、あちこちに聞えるばかり、たしかにそれは梟《ふくろう》のお経《きょう》だったのです。
しばらくたって、西の遠くの方を、汽車のごうと走る音がしました。その音は、今度は東の方の丘《おか》に響《ひび》いて、ごとんごとんとこだまをかえして来ました。
林はまたしずまりかえりました。よくよく梢をすかして見ましたら、やっぱりそれは梟でした。一|疋《ぴき》の大きなのは、林の中の一番高い松の木の、一番高い枝《えだ》にとまり、そのまわりの木のあちこちの枝には、大きなのや小さいのや、もうたくさんのふくろうが、じっととまってだまっていました。ほんのときどき、かすかなかすかなため息の音や、すすり泣きの声がするばかりです。
ゴホゴホ声が又起りました。
「ただ今のご文《もん》は、梟鵄《きょうし》守護
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