から飛び込《こ》んで行って、手伝ってあげようと、何べんも何べんも家のまわりを飛んで見たけれど、どこにもあいてる所はないんだろう。ほんとうに可哀《かあい》そうだねえ、穂吉さんは、けれども泣いちゃいないよ。」
梟のお母さんが、大きな眼を泣いてまぶしそうにしょぼしょぼしながら訊《たず》ねました。
「あの家に猫《ねこ》は居ないようでございましたか。」
「ええ、猫は居なかったようですよ。きっと居ないんです。ずいぶん暫《しば》らく、私はのぞいていたんですけれど、とうとう見えなかったのですから。」
「そんならまあ安心でございます。ほんとうにみなさまに飛んだご迷惑《めいわく》をかけてお申し訳けもございません。みんな穂吉の不注意からでございます。」
「いいえ、いいえ、そんなことはありません。あんな賢《かしこ》いお子さんでも災難というものは仕方ありません。」
林中の女のふくろうがまるで口口に答えました。その音は二町ばかり西の方の大きな藁屋根《わらやね》の中に捕《とら》われている穂吉の処まで、ほんのかすかにでしたけれども聞えたのです。
ふくろうのおじいさんが度々《たびたび》声がかすれながらふくろうのお
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