《かた》くなって、兄弟三人分一人で聴こうという風でした。

        *

 その次の日の六月二十五日の晩でした。
 丁度ゆうべと同じ時刻でしたのに、説教はまだ始まらず、あの説教の坊さんは、眼《め》を瞑《つぶ》ってだまって説教の木の高い枝にとまり、まわりにゆうべと同じにとまった沢山《たくさん》の梟《ふくろう》どもはなぜか大へんみな興奮している模様でした。女のふくろうにはおろおろ泣いているのもありましたし、男のふくろうはもうとても斯《こ》うしていられないというようにプリプリしていました。それにあのゆうべの三人兄弟の家族の中では一番高い処《ところ》に居るおじいさんの梟はもうすっかり眼を泣きはらして頬が時々びくびく云い、泪《なみだ》は声なくその赤くふくれた眼から落ちていました。
 もちろんふくろうのお母さんはしくしくしくしく泣いていました。乱暴ものの二疋の兄弟も不思議にその晩はきちんと座《すわ》って、大きな眼をじっと下に落していました。又ふくろうのお父さんは、しきりに西の方を見ていました。けれども一体どうしたのかあの温和《おとな》しい穂吉の形が見えませんでした。風が少し出て来ましたので
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