爾迦夷《るかい》に告げて曰《いわ》くとある。爾迦夷というはこのとき我等と同様|梟《ふくろう》じゃ。われらのご先祖と、一緒にお棲《すま》いなされたお方じゃ。今でも爾迦夷|上人《しょうにん》と申しあげて、毎日十三日が[#「毎日十三日が」はママ]ご命日じゃ。いずれの家でも、梟の限りは、十三日には楢《なら》の木の葉を取《と》て参《まい》て、爾迦夷上人さまにさしあげるということをやるじゃ、これは爾迦夷さまが楢の木にお棲いなされたからじゃ。この爾迦夷さまは、早くから梟の身のあさましいことをご覚悟《かくご》遊ばされ、出離の道を求められたじゃげなが、とうとうその一心の甲斐《かい》あって、疾翔大力さまにめぐりあい、ついにその尊い教《おしえ》を聴聞《ちょうもん》あって、天上へ行かしゃれた。その爾迦夷さまへのご説法じゃ。諦に聴け、諦に聴け。善くこれを思念せよと。心をしずめてよく聴けよ、心をしずめてよく聴けよと斯《こ》うじゃ。いずれの説法の座でも、よくよく心をしずめ耳をすまして聴くことは大切なのじゃ。上《うわ》の空で聞いていたでは何にもならぬじゃ。」
 ところがこのとき、さっきの喧嘩をした二疋の子供のふくろう
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