食《たんじき》す。或《あるい》は沼田《しょうでん》に至り、螺蛤《らこう》を啄《ついば》む。螺蛤|軟泥《なんでい》中にあり、心|柔※[#「車+(而/大)」、第3水準1−92−46]《にゅうなん》にして、唯温水を憶《おも》う。時に俄《にわか》に身空中にあり、或は直ちに身を破る、悶乱《もんらん》声を絶す。汝等これを※[#「口+敢」、第3水準1−15−19]食《たんじき》するに、又|懺悔《ざんげ》の念あることなし。
 斯《かく》の如《ごと》きの諸の悪業、挙げて数うるなし。悪業を以ての故《ゆえ》に、更《さら》に又諸の悪業を作る。継起《けいき》して遂《つい》に竟《おわ》ることなし。昼は則ち日光を懼《おそ》れ、又人|及《および》諸の強鳥を恐《おそ》る。心|暫《しば》らくも安らかなることなし、一度《ひとたび》梟身《きょうしん》を尽《つく》して、又|新《あらた》に梟身を得。審《つまびらか》に諸の苦患《くげん》を被《こうむ》りて又尽くることなし。で前の座では、捨身菩薩《しゃしんぼさつ》を疾翔大力《しっしょうたいりき》と呼びあげるわけあい又、その願成《がんじょう》の因縁《いんねん》をお話いたしたじゃが、次に
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