と、いつも気軽でゐねばならぬ、とな、斯う云うて下され。あゝ、されども、されども、とられた者は又別ぢゃ。何のさはりも無いものが、とや斯う言うても、何にもならぬ。あゝ可哀さうなことぢゃ不愍《ふびん》なことぢゃ。」
 お父さんの梟は何べんも頭を下げました。
「ありがたうございます。ありがたうございます。もうきっとさう申し伝へて参ります。斯《こ》んなお語《ことば》を伝へ聞いたら、もう死んでもよいと申しますでございませう。」
「いや、いや、さうぢゃ。斯うも云うて下され。いくら飼はれるときまっても、子供心はもとより一向たよりないもの、又近くには猫犬なども居ることぢゃ、もし万一の場合は、たゞあの疾翔大力《しっしょうたいりき》のおん名を唱へなされとな。さう云うて下され。おゝ不愍《ふびん》ぢゃ。」
「ありがたうございます。では行って参ります。」
 梟のお母さんが、泣きむせびながら申しました。
「ああ、もしどうぞ、いのちのある間は朝夕二度、私に聞えるやう高く啼《な》いて呉《く》れとおっしゃって下さいませ。」
「いゝよ。ではみなさん、行って参ります。」
 梟のお父さんは、二三度羽ばたきをして見てから、音もな
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